ポスドクのT中さんは高校の頃までピアニストも目指してたそうだ.

夕方家に招いてピアノを披露していただいた.主にラフマニノフのプレリュードを弾いてもらいましたが,ビックリするほどの凄腕の持ち主でありました.大きな手でタッチが激しく,まさにラフマニノフを弾くための手を持っているようだ.

ちなみに,田中さんの専門は代数的組み合わせ論という数学の1分野であるそうだ.その中でAssociation Scheme (AS)というものを研究されている.夜飲みながら教えていただいたが,ASとは有限集合Xと公理(A1,A2,A3,A4)を満たすd+1個の関係R_i (i=0,...d)が定義されていて,(A1) R_0={(x,x)|x in X} (R_0は自分自身の関係), (A2) R_0 U … U R_d = X×X, R_i∩R_j = Φ (i≠j) ((x,y)のペアは必ずどこかの関係にある), (A3) 任意のiに対し, i'が存在してR_{i'}={(x,y)|(y,x) in R_i}(逆の関係は一意に'で定まる) (A4) 任意のi,j,kに対し,p_{ijk}=#({ z in X | (x,z) in R_i, (z,y) in R_j})は(x,y) in R_kに依存しない (#(*)は*の個数)です.


あえて応用するならば情報のコードに使われるものだ.例えば情報をビット{0,1}で表して,そのn個の直積空間をXと考える(d bits).例えば「11010100」(d=8)とかのwordで情報を表すわけだが,正しい情報が送られているかなどの誤差評価をするためにword間に距離を定義するのが便利である.簡単なのがハミング距離と呼ばれるもので,同じ桁におけるビット同士が異なる数で定義する.例えば「11010100」と「01011101」は1桁,5桁,8桁目で異なるからハミング距離は3である.この距離は最小で0,最大でdの全部でd+1個あるわけだが,これをAssociation Schemeの関係R_iとすることができる.上の公理を満たすことは簡単にわかるだろう.

こういう話を聞くと専門上すぐに「量子版」が考えたくなるのは職業病だろう.どういう意味で役立つか,物理的な意義を持つか,こういうことを熟考した上でやらなければいけないのであるが,そういうのは抜きにしてもパッとゲーム感覚でこういうのを構成できるような頭脳があるに越したことはない.ないのだが….